| 第一回「ユーザーユニオン事件」
50代以上の人なら知っているかもしれませんが、70年代に本田技研の「欠陥車」問題で消費者であるユーザーがユーザーユニオンという団体を組織して本田の欠陥車(死者43人、負傷者約の400人)の追及した事件であった。 当時はアメリカでゼネラルモーターズを追及していた弁護士ラルフ・ネーダーという人が有名だったのでユーザーユニオンの代表と顧問弁護士もこの人にあやかり団体を結成して本田を追及、ホンダN360の欠陥問題をネタに16億円の賠償金を請求したもの。 ところが、本田技研は代表の松田文雄氏と弁護士の安部治夫氏を恐喝で逆告訴(だったと思います?)したので二人は東京地検特捜部に逮捕されることになる。 この恐喝罪の是非が今回コラムの最大のポイントである。 以下私の見解を展開する。 まず、判例は最高裁の昭和30年の判決で「たとえ、正当な権利行使であってもその手段と範囲が 正当性を欠き不当な権利行使になる場合にはすべての範囲(要求した金額の範囲)で恐喝罪が成立する」という。 本件ユーザーユニオン事件も15年かかって最高裁で判決が確定するが、最高裁の判決は理由も示さずただただ最高裁昭和30年判決を引用して上告を棄却した。 当時明治大学の学生だった(事件発生時)私は安部先生が高名な検事だったので事件の成り行きに 驚愕しただけであった。 しかし、今はこの裁判がとんでもない消費者運動・市民運動への弾圧事件であると思っている。 日本人の忘却癖も手伝ってか事件の記憶も風化しているようでネット検索は困難であった。 一番問題な箇所は「たとえ正当な権利行使であってもその手段が適切でなく不当であれば」恐喝罪 になるという判断である。 確かに権利行使があっても手段が違法なものになれば恐喝になると解釈されるケースもある。例えば高利貸しの請求などの場合で脅迫して金銭を出させた場合などである。 しかし、ユーザーユニオン事件では賠償金16億円の請求が不当な脅迫に当たるという判断はおかしい。マスコミやホンダは「法外な請求」と言うが死者43人、負傷者400人という被害を見れば「法外」だとは言えないのである。 (紙面の都合で)以上とする。
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