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0419 小日本のすすめ 鈴木建三 2012/04/23 21:29:41
 このところ年齢のせいか、日本の戦前とか戦中のとばかり思い出している。
 それでふと気になったのは、日露戦争への反戦運動のことはよく聞くのに,日清戦争についてそういったことは少しも聞かないことである。私の祖父は日清戦争で二十そこそこで旅順で戦死している。
 ところで、そんなことと関係なく、勝海舟の『氷川清話』を読んでいたら、はっとする文章にお目にかかった。それは、日清戦争に関する次のような文章である。
  「日清戦争は俺は大反対だったよ。なぜかって 兄弟喧嘩だもの犬も食わないじゃないか。たと え日本が勝ってもドーなる。支那はやはりスフ ィンクスとして外国の奴らが分からぬに限る。 支那の実力が分かったら最後欧米からドシドシ 押し掛けて来る。一体支那五億の民衆は日本に とって最大の顧客さ(中略)
  東洋のことは東洋だけでやるに限るよ(中略) 今日になって兄弟喧嘩して支那の内輪をサラケ 出して、欧米の乗ずるところになるくらいのも のさ (中略)
  隣国交兵日 其軍更無名
  可憐鶏林肉 割以與魯英」
 というのがあって、さらに下関の講和会議に当 って、「俺の意見は日本は朝鮮の独立保護のため に戦ったのだから、土地は寸尺も取るべからず」(後略)といっている。

 また、東洋史の御大将だった白鳥庫治はこの頃、日本が一応千何百年無事に過ごしてきたのは、東洋史は中国を中心にその辺境の諸民族の闘争の歴史なのに、日本は海上の小島の集まりだから、それと無縁に過ごせたせいだからと言っている。
 歴史についてifを言うのはいけないそうだけれど、素人の私は、もし勝の意見どうり寸土も取らなければ、三国干渉も臥薪嘗胆もありえなかったし、日露戦争もなかったろうし、日本の歴史も随分違っただろうと思ってしまう。
 そして、この二人の人の意見は、これからの日本のあるべき姿を考えるには少々参考になるような気がする。東海の小島の集まりの日本が、世界の大国並みの顔をしようとするのがもともと少しおかしいのではないか。
 無茶な国アメリカのグローバリズムと一緒になって、金儲けに夢中になるのも、なにやら無理な気がする。
 十五年戦争中本当に飢え続けた,くぬぎ林の中の欠食児童は、この小さなな国は先ず、食料自給率は百%近くにすることに努めた方がいいのではないかと思っている。
 そのためには日本は憲法どうり非武装にして、自衛隊はやめて、其の費用で政府でお米を高く買って、国民に安く配ればいい。そうすれば日本の農業は復興して、自衛隊の失業者は楽しく農業をやるだろう。人殺し訓練より面白くないかもしれないが、人間としていい事なのはたしかだろう。
 そのほうが、アメリカさんの前衛基地としてアメリカの傭兵になって近隣諸国を脅迫し続けるよりずっとましである。このためにはせめて、アメリカさんにインディアンから奪ったアメリカ大陸に帰ってもらうのは大変だろうが、国民全部がそれを希望していることを始終示し続ければ、少しは効果があるかもしれない。
 私自身としては、食べる物さえあれば、桃青の『奥の細道』の「月日は百代の過客にして云々」という名文を、李白の「春夜宴桃李宴序」と比べながら、其の利用の巧みさに感嘆したり、蕪村の「易水に根深流れる寒さかな」の句を楽しんだりしたいのである。
 ここで老人の繰言は終わります。「ましてまして悟る思いは他ならじ、我が嘆きをば我知るなれば」
(西行)