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0399 時代閉塞の状況をどう見るか 流水 2011/12/07 20:25:55
石川啄木に「時代閉塞の現状」という論文がある。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000153/files/814_20612.html

副題に(強権、純粋自然主義の最後および明日の考察)とあるように、大逆事件直後の国家の強権的支配に抗そうとした啄木の意図が明確にわかる。

・・『かくて我々の今後の方針は、以上三次の経験によってほぼ限定されているのである。すなわち我々の理想はもはや「善」や「美」に対する空想であるわけはない。いっさいの空想を峻拒(しゅんきょ)して、そこに残るただ一つの真実――「必要」! これじつに我々が未来に向って求むべきいっさいである。我々は今最も厳密に、大胆に、自由に「今日」を研究して、そこに我々自身にとっての「明日」の必要を発見しなければならぬ。必要は最も確実なる理想である。』

この論文の末尾の文章である。【善】や【美】に対する全ての空想を峻拒しろ!という主張には、大逆事件の真相を探ろうとした啄木の強い決意が滲み出ている。

今、わたしたちが直面しているのは、石川啄木が直面した現状とほとんど変わらない。TPP参加問題、消費税増税、年金減額、沖縄基地問題をめぐる防衛官僚の暴言、橋下大阪市長の圧倒的勝利・・。一見脈絡がないように見えるが、底流ではみなつながっている。

TPP問題は、米国の対中国政策の変更(アジアにおける覇権争い)に淵源がある。国内製造業の復活が望めない米国は金融と軍事による新たな植民地的支配でしか生き延びられない。そのための新たな戦略が、TPPである。その証拠にTPP賛成の政治家・官僚・評論家連中が韓国が結んだFTAに乗り遅れるな、と騒いでいるが、この条約内容のあまりの不平等さに慄然とする。
・・・
(1)サービス市場開放のNegative list:
サービス市場を全面的に開放する。例外的に禁止する品目だけを明記する。
(2)Ratchet条項:
一度規制を緩和するとどんなことがあっても元に戻せない、狂牛病が発生しても牛肉の輸入を中断できない。
(3)Future most-favored-nation treatment:
未来最恵国待遇:今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米にも同じ条件を適用する。
(4)Snap-back:
自動車分野で韓国が協定に違反した場合、または米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米企業が判断した場合、米の自動車輸入関税2.5%撤廃を無効にする。
(5)ISD:Investor-State Dispute Settlement。
韓国に投資した企業が、韓国の政策によって損害を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できる。韓国で裁判は行わない。韓国にだけ適用。
(6)Non-Violation Complaint:
米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに、国際機関に対して韓国を提訴できる。例えば米の民間医療保険会社が「韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない」として、米国政府に対し韓国を提訴するよう求める可能性がある。韓米FTAに反対する人たちはこれが乱用されるのではないかと恐れている。
(7)韓国政府が規制の必要性を立証できない場合は、市場開放のための追加措置を取る必要が生じる。
(8)米企業・米国人に対しては、韓国の法律より韓米FTAを優先適用
  例えば牛肉の場合、韓国では食用にできない部位を、米国法は加工用食肉として認めている。FTAが優先されると、そういった部位も輸入しなければならなくなる。また韓国法は、公共企業や放送局といった基幹となる企業において、外国人の持分を制限している。FTAが優先されると、韓国の全企業が外国人持分制限を撤廃する必要がある。外国人または外国企業の持分制限率は事業分野ごとに異なる。
(9)知的財産権を米が直接規制
  例えば米国企業が、韓国のWEBサイトを閉鎖することができるようになる。韓国では現在、非営利目的で映画のレビューを書くためであれば、映画シーンのキャプチャー画像を1〜2枚載せても、誰も文句を言わない。しかし、米国から見るとこれは著作権違反。このため、その掲示物い対して訴訟が始まれば、サイト閉鎖に追い込まれることが十分ありえる。非営利目的のBlogやSNSであっても、転載などで訴訟が多発する可能性あり。
(10)公企業の民営化
・・・・・教えて!斎藤さん 気象予報士斎藤やすのりBLOG)
http://saito-san.sblo.jp/article/48971807.html

さらに消費税増税・年金減額など国民負担増加などの政策は、ほとんど財務省のシナリオ。民主党は、総計200兆円の(特別会計を含む)予算を総体で見直し、財源を生み出すと公約していたが、結局特別会計は手つかず。表の予算すら見直すことができない。それだけ、財務省を頂点とする官僚組織・既得権益層の力が強大だということだ。

小沢一郎に対する攻撃は、民主党内部の革命的変革勢力に対する既得権益層の総力を挙げてのものだということが徐々に明らかになった。その背後に米国金融勢力(国際資本)の影がちらついている。韓国が締結したFTAの内容を見れば、明らかであろう。

「国際情勢は複雑怪奇である」と言って総辞職した総理大臣もいたが、国際情勢の複雑怪奇さは今も昔も変わらない。自主自立の志のない国や指導者は、日々流動する国際情勢に翻弄されるのは宿命である。夏目漱石の名台詞ではないが、「知に掉させば角が立つ、情に掉させば流される」のは、国際政治も同じ。この危ういバランスをどう取り、自国の利益(国益)をどう守るか。自主自立の志のない政治家や外交官には至難の業であろう。

民主党が政権交代を果たす前から指摘したが、【国民生活が第一】の政治を実現するには、日本の実質的支配者である悪徳ペンタゴン(政・官・業・メデイア・外国資本等)の既得権益勢力を解体しなければならない。この為には、彼らとの熾烈な戦いは避けて通れない。この覚悟がない限り民主党政権は短命に終わらざるを得ない。これが、わたしが日本における政権交代は他国の革命に匹敵する、と主張してきた理由である。

現在の民主党政権(菅政権、野田政権=松下政経塾政権)には、この覚悟が決定的に欠落している。というより、彼らの脳裏には「国民生活が第一」という理想などないに等しい。私流にいえば、完全な【反革命政権】である。もはや民主党政権の継続は、不可能に近くなっている。

わたしたちは、石川啄木流にいうなれば、民主党政権に託した【夢】や【美】の空想を峻拒するところから、出発しなければならない。全ての幻想を峻拒するところから、出直さなければならない。吉本隆明風に言うならば、【全ての擬制】が振りまく幻想を捨て去ることから始めなければならない。東日本大震災の悪夢のような壊滅的光景から、新たな21世紀日本の構築を始めなければならない。