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0382 ぐちゃぐちゃ政局の深層 流水 2011/08/10 17:50:25
ついに、日本の政治もどんづまりの様相を呈し始めた。以前にも何度か指摘したが、日本における「政権交代」は他国における「革命」に匹敵する大転換だという認識の深浅が今問われている。

現在の政局を一言で言うと、民主党政治家・民主党員・国民たちの認識の浅さが、現在の政局を招いたといえる。

政権交代前から民主党に向けられた攻撃は、「政権交代」後例を見ない激しさだった。とくに、小沢一郎に向けられた攻撃は、カール・ウォルフレンが「これほど執拗に長期にわたって一人の政治家の政治生命を奪うための攻撃が行われたことは、歴史上まれである」と指摘しているように、既得権益層の危機感の深さを物語っている。

つまり、既得権益層の危機感の深さ(革命によって全てを失うかも知れないという恐怖感)は、民主党の政治家・民主党員・民主党支持層の国民たち)の想像力をはるかに上回っていた。

東京地検特捜部は、自らのレーゾンデートルである「法の正義」をかなぐり捨て、恣意的捜査を繰り返した。その結果、村木事件に象徴されるように、その権威は地に堕ちた。いまや、ネット上では、「冤罪創出機関」などと揶揄される始末だ。

メディアはメディイアで、地検情報を垂れ流し、民主主義の成熟に不可欠な正常な「言論機関」としての役割を放棄。いまや、「世論操作機関」として既得権益層の代弁者としての地位に堕ちた。

民主党の迷走は、既得権益層の反撃(反革命的攻撃)に対してあまりにも危機感がなさすぎた点にある。それどころか、既得権益層の走狗となって自らの権力維持に走る一団(松下政経塾出身者、プラス権力亡者と化した菅直人と取り巻き連中)たちは、民主党の革命理念(マニフェスト)を骨抜きにするために奔走している。

しかし、彼らが完全に忘却しているのは、一度崩壊した「幻想」は、決して復活することはないという真実である。一度失墜した権威は、同じ形では決して復活しない。

今世界や日本が直面している危機も同様の構造を持っている。米国発世界恐慌が現実味を帯びて語られているが、これは戦後米国が力づくで維持してきたドル紙幣のシニョリッジ特権が崩壊し始めたことに要因がある。

※シニョリッジとは中世ヨーロッパの領主の持つ様々な特権を意味する。シニョリッジ特権の最重要なものは、貨幣発行権。具体的に言うと、額面より安い低品質な貨幣を鋳造し、鋳造コストと額面との差額を財政収入として享受した。

戦後世界の基軸通貨として君臨した米ドルには、この通貨発行益(シニョリッジ特権)を最大に享受できた。さらに注意しておかなければならないのは、このドル紙幣の発行益はリアル市場において将来ドルが稼ぎ出すであろう将来益を予測し、それに見合うドル紙幣を発行することができた。その意味において、この通貨発行益(シニョリッジ)は米国の政治的覇権力・軍事的覇権力と密接に連動していた。

経済的には、相当以前から、アフガン・イラク戦争以降は政治的・軍事的覇権力に陰りを見せていた米国が、シニョリッジ特権(通貨発行益)を早晩失うことは明白だった。これが、現在の同時株安・円高などの根底にある。

日本の脱原発議論も同様な構造を持っている。先に「脱原発」論でも書いたが、「原子力村」と称される電力会社を頂点とする既得権益層の覇権力の低下が脱原発論の背景にある。つまり、「脱原発」を推進することは、日本の既得権益層の利権を破壊し、新たな社会システムを構築する覚悟がなければできるはずがない。

日本の「政権交代」の革命的意義がここにあった。原子力村に象徴される既得権益層の利権を破壊し、21世紀日本を牽引できうる新たな社会システムを構築することこそ「政権交代」のレーゾンデートルに他ならなかった。菅直人のように、既得権益層の利権破壊は何もせず、今になって「脱原発」がわたしの使命などというのは、支離滅裂もいいところだ。

現在のぐちゃぐちゃ政局を見抜くには、日本における「政権交代」の歴史的意義・意味を手放さなければ、簡単に理解できる。

菅直人の理念・哲学のなさ、人間的信義の欠落は、論外だが、次の代表候補たちの乱立ぶりに民主党の失ったものの大きさがよくわかる。菅直人、岡田幹事長などが強行した小沢一郎の党員資格の停止などその最たるもので、こういう危機の時ほど彼のような手腕が必要とされる。どんな能力のあるものでも、権限がなければその能力は宝の持ち腐れ。衆目の一致するように、民主党の中で最も能力があるとされる「小沢一郎」を座敷牢に入れたまま、破滅の道をひた走ってしまった。

現在雨後のタケノコのように、次期代表候補たちの名前が挙がっているが、誰もかれも菅直人にも劣る政治的力量の持ち主に過ぎない。民主党の「政権交代」の意味を本当に分かり、それを実現しようとする気迫も力量もない。現在の破局的な状況を打ち破る能力はない。

現在の日本の状況は、大局観のない政治家で打開できるほど甘くはない。何度も書いて恐縮だが、世界的【転形期】の時代なのだ。本当の意味で、日本と日本国民の未来のために「命を賭ける」覚悟のない人間がなるべきではない。その時々で「云うことが変化する」レベルの人間がなれば、日本は本当に沈没する。菅直人夫妻のような「権力の甘い蜜」に浸りたい人間など、全て淘汰されなければならない。