呼出完了
0367 Re: 護憲コラム せっちゃん 2011/05/04 11:24:32
現場からの報告
−“帰りたい!”−
 言語障害者のMさんが、大きな旅行用のジュラルミンバックを引きずって私たちの定着支援センターの事務所にやってきました。
 Mさんはかなり興奮分気味な表情で、もどかしそうに意を伝えようとしているのですが、気持ちが募るほど相談員との意思疎通が難しくなってしまったようで、隣室で別の仕事をしていた私が呼び出されました。
『「今すぐK市に帰る」と云っています。「センターを信用できない」と云っています。』ということだった。
「今からK市に帰って、昔、世話になったK市の方の世話になる。現金、預金通帳を全部もってこい」と云ったのは、「K市が現金、預金通帳を全部もって来て、と云っている」ので、Mさんの主張になったことが筆談での紆余曲折を経ながらわかった。筆談の結果に基づく問題の解決が必要です。
Mさんは、本来、言語障害者の福祉施設への入居が出来るように、当該施設との折衝及び措置権者を引き受けてくれる当該行政と折衝を重ねましたが、双方の壁を越えられず、やむなくAP入居に伴う生活支援(フォローアップ)を行っていたのです。
私たちは、Mさんが矯正施設入所中に受給した年金の預金があったので、出所後は、その年金でAP入居費用を賄い、その後の年金生活を維持していくことを目指して、Mさんとの間で、年金の保全と金銭管理契約を含めた生活全般の支援を行っていく為の契約及び相互の約束事を交わしていました。勿論、無償での支援に他なりませんが。
 さて、件の「現金、預金通帳を全部もって来て、と云っている」との主張と「信用できない」との主張との根拠を尋ねることにしました。
 「信用できない」とのことについては、金銭管理帳簿(入出金毎の彼のサイン)、預金通帳及び残高確認、現金残高確認、総てを検証していただきながら、筆談でその根拠をお聞きすると、相談員とのコミュニケーション上の齟齬、すなわち、彼を担当する相談員はMさん一人ではなく多数の支援者を担当している為、彼にとってじっくり話し合っていく時間がとれなかったことにあることが分かりました。この点ついての了解は、私たちが、意思疎通の前提となる、時間(回数)を重ねて、“知り合う”辛抱強さを持続する他はありませんし、彼が了解できるまで誠実に、丁寧に関係する他はありません。
 心配なのは、『「現金、預金通帳を全部もって来て、と云っている」という相手は何者なのか?』ということでしたので、ゆっくり、筆談しながらK市の相手を特定しながら、行政関係のキーパーソンも分かって、直ちに、先方と電話連絡を取ることが出来たので、先方の事情をお聞きしましたが、K市での受入れについては、過去の関わりの説明をいただく中で“お断り”の意志を明確に伝えられてしまいました。
 しかし、K市はMさんの故郷でもあり、彼が“帰りたい”のであれば、その為の準備をすることをMさんに伝えるとともに、一旦彼の居宅に送っていくことにしました。
 帰途、Mさんは上機嫌だったようです。
 その後、Mさんは単独でKを訪れ、K市とそのキーパーソンや昔世話になった福祉関係機関とも会ったとのことでしたが、K市への帰還(帰郷)を断られてしまった、との彼からの報告を担当相談員から受けるとともに、「『やっぱりここが良い。世話になります。』と云われた」との補足を受けてしまいました。
 しかし、私たちは、『やっぱり「何時か、きっと“帰りたい!”」を果たしたい』と思っています。その上で、「やっぱりここが良い」との関係の継続が生まれれば。