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0360 共に笑顔になれる日がくると信じて 笹井明子 2011/03/21 16:55:06
NHK合唱コンクールの出場を諦めて、被災地の避難所で一生懸命歌う中学生たち。その歌声を聴いて涙を拭く避難所の方々。あちこちの避難所を探しまわってようやく会えて、涙ながらに抱き合う家族。がれきを掻き分けて我が子を探す母親。原発への放水任務を終えた消防庁ハイパーレスキュー隊員とその家族に、涙を堪えてお礼とお詫びを言う総括隊長。・・・

皆さんの声を押し殺した涙を前に、なす術もなく、私たちも毎日涙を流し続けています。皆さんの痛みは私たちの痛み、皆さんの苦しみは私たちの苦しみです。どうか祈らせてください。

東京電力の初動の誤り、政府内の大混乱や指揮系統の乱れ、原子力安全保安院の不明瞭な説明、東京電力の無計画な計画停電、JRの早すぎる運行停止。こうした一連のことは、大きな組織の陥りやすい責任逃れの体質を一挙に顕わにし、全てが後手後手、危機対応能力の欠如を見せ付けました。見得や責任転嫁を止めて、あらゆるプロフェッショナルの力を要請し、必死の対応を始めたのは、状況が深刻化しよいよ最悪な事態という段階になった、ごく最近のことです。

要請を受けた自衛隊、機動隊、レスキュー隊、東電の現場の技術者、などプロの方々の冷静な判断と行動で、予断は許さないとは言え、ようやく収束の方向が見え始めました。深く感謝すると共に、皆さんのご無事とその献身が実るようにと、ただ祈り見守るばかりです。しかし一方で、今の事態の最大の要因になった組織のあり方、その責任の取り方、今後の組織の行方を、今もこれからも私たちは冷静に観続けるでしょう。

私たちは今、広い地域に亘って放射能検出のニュースに怯える日々を過ごしています。首都圏では空気中にも水にも、通常より高い放射性物質が検出されたと報じられています。一部地域の葉もの野菜や原乳からは、暫定規制値の数倍の放射能が検出されたといいます。「買い占めるな」「落ち着いて行動を」というのは簡単ですが、家族の健康を守る主婦の不安は増すばかりです。

一人で悩んでいるとパニックになる。言葉を交わす誰もがそう口にします。今は被災地に居なくても、不安や恐怖を分かち合う家族や友人との、日常的な会話がとても大切だと痛感します。加えて、メディアには、人々が冷静に行動できるように、率直で正確な情報を、適切なタイミングで流すことに全力を挙げてもらいたいと思います。

こうして直接の被害を免れたところに居ても、私たちは悲しみと、怒りと、不安の中で暮らしていますが、それでも、被災地東北の人々の忍耐と秩序ある行動に逆に勇気をもらい、支援のために自分にできることを地道にやる!の決意のもと、具体的に動き出している人たちがいて、その輪は日毎に大きく広がっています。

例えば、千葉県佐倉市在住の醍醐聰さんは、ご自身の地域でも被災者を受け入れようと、「行政と市民が協同した被災者支援の取り組み」を提案し、市に働きかけたことをブログで紹介されています。
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-2985.html

また、アースデイマネーというNPOでは、被災者ホームステイを呼びかけて、今現在1200件以上のホームステイ受け入れ登録があるとのことです。
http://www.earthdaymoney.org/

『今回の大災害は日本人の原体験に組み込まれ、時代が一変する分岐点となるに違いない。・・・被災者への共感と援助が新たな連帯社会を切り開く兆しがある。他方、「どうしても避けられない事態なのだ」という不可避性のイメージ、「誰もが等しく負担すべきだ」という平等性のイメージを利用して、強引な政治的決定が行われる可能性もある。・・・社会的疲弊と政治的混乱が危ない政治勢力を招き寄せれば、今回の大災害は暗い時代への分岐点となるかもしれない。』(竹田茂夫・東京新聞3/17「本音のコラム」)

産業もインフラも大きく傷ついた日本は、文字通り一から出直しですが、この時代の分岐点に、経済活性化などの掛け声で従来通りの強引な政治をされたら、私たちはますます傷つくばかりです。しかし、涙と祈りと共に踏み出した私たちの「市民と行政の協同」、「共感と援助の連帯」の一歩は、一過性で終わることなく、きっと大きく成長し、人の命、人の幸せを何よりも大事にする新しい社会作りの、強固な基盤になれるはずです。

被災された方も、幸いにも今回は免れた人たちも、心折れることなく、手を携えて生きていきましょう。いつか、必ず、共に笑顔になれる日がくることを信じて。

☆合唱曲「あすという日が」☆(YouTube)
http://www.youtube.com/watch?v=QQsKdWKmY-A