呼出完了
0339 Re: 護憲コラム せっちゃん 2010/11/06-02:58:17
現場からの報告
 −地域生活定着支援センターは福祉と司法の懸け橋としての役割を担います−
 各種調査研究によると、矯正施設の中に福祉の支援を必要とする知的障がい(疑いを含む)状態の人22.9%、65歳以上の高齢の人7.2%に上っていることが分かってきました。そうした状況にある多くの人々が、満期で出所しても、立ち行く先も、係わってくれる縁者もない状況の中で、“生きる糧”を得る為に犯罪を繰り返す「累犯“障害者・高齢者”」の構造的な問題が明らかになってきました。また、その累犯で最も多い罪名は高齢者・知的障がい者共に「窃盗」、続いて無銭飲食、無賃乗車等も含まれる「詐欺」であることも分かってきました。(知的障がい者の犯罪動機は「困窮・生活苦」が36.8%で最多。高齢者の犯罪増加要因である「窃盗」の動機は男性が「生活困窮」、女性では、「対象物の所有」「節約」が多い。「犯罪白書 平成20年版、平成18年法務省特別調査等)
 「矯正施設を満期で出所しても、立ち行く先も、係わってくれる縁者もない状況の中で、“生きる糧”を得る為に犯罪を繰り返す」主要な犯罪動機となっている「困窮・生活苦」の問題解決を支援していく為に、満期出所する以前に、社会的福祉資源へと繋いでいく「福祉と司法の懸け橋として地域生活定着支援センター」が全国都道府県に開設されることになりました。そして、ここの県でも、地域生活定着支援センターが今年7月より開設されました。
保護観察所からの依頼や他県の地域生活定着センターからの支援要請を合わせて、既に20件程の支援対象者との出会いを持つに至っています。
依頼や要請を受けて、支援対象者の満期時期までの期間が最短で1週間後、2・3ヶ月後が大半となっている状況があります。
依頼された支援対象者の多くは、微罪(コンビニでのパンの窃盗、お寺での賽銭の窃盗、ファミレスでの無銭飲食等)に伴う執行猶予期間中での再犯で実刑入所そして、満期出所後2〜3ヶ月後の再犯で重犯実刑へ、そして、“累犯”による微罪の刑長期化への連鎖状況を経過しています。
「社会的な福祉資源へと繋いでいく“制度と関わる人の絆”さえあれば、人生の30数年を矯正施設でおくることは回避でき、通常の社会生活環境を得ることができたハズ」との思いの中で、定着センターの支援活動が担われていると云っても過言ではないと云えると思います。
ところで、“司法と福祉のかけ橋”の仕事とは云え、支援対象者諸氏の多くは、既に、住所実態が無いが故に現住所を喪失している状況にあり、福祉へ繋いでいく為の当該対象者の市町村住所を確定していく手続きに当って、市町村福祉行政の理解とご協力をいただく為の手続きはかなりな汗と忍耐を必要とする状況があります。
“法”と“財政問題の矛盾を福祉行政の現場を共に担ながら、立場の違う出会いの中で、“法”に対する市町村間の“法解釈論”の綱引きの狭間に置かれる支援対象者の現状の克服に向けて、汗をかき、狭間の壁をよじ登り、なんとか“希望帰住地の確定”に格闘しているところです。加えて、もう一つの山、“福祉施設”との折衝と共同性の獲得に向けた汗を求められ、当該施設の福祉担当者の多くの方々の“総論的理解”をいたくものの、施設の実情を踏まえた“各論・・・!”の問題解決に今一つの汗を必要とする状況もあります。支援対象者の“安定した適宜な地域生活定着”に向けた活動と事業にとって、この国の“法治国家“としての行政及び福祉”の実態との格闘と共同化に向けた努力と忍耐を必要としています。そしてそうした実態の解決への道を支援対象者と共に寄り添いながら創造していくことこそ、“地域生活支援センター”の真の役割でもあると受けとめているところです。しかし、そうした道の創造は、当該者だけでは達成できず、こうした事業活動に対する社会的なご理解とご支援を必要とします。そして、なによりも、行政の温かいまなざしと支援の手を必要としています。
*矯正施設とは、刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院の総称。
*希望帰住地とは、矯正施設収容者が退所後に希望する住居地。故郷が多いのですが、家族関係の状況や友人関係での状況等で、希望居住地が最適とは云えない状況もあります。