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0329 「プロ」と「アマチュア」−民主党代表選に思う 笹井明子 2010/09/13-21:30:14
14日の民主党代表選にあたっては、マスメディアもインターネット界も連日小沢・菅両候補の値踏みでヒートアップ。お陰で二人の主張の違いは勿論、立ち位置や政治手法の違いなど、多角的な視点から観察することができて、投票権を持たない立場の者にとっても、非常に興味深い展開となりました。

私にとってこの間の最大の収穫は、小沢一郎氏がどんな政治理念を持っているのか、そしてなぜ時に忌避され、時に熱狂的に支持されるのか、など、これまで漠然としたイメージが先行していた政治家・小沢一郎の姿が、菅直人氏との対比によってより具体的に見えてきたことです。

今回の選挙は様々な切り口で語られていますが、一言でいえば「プロの政治家」対「アマチュアの政治家」の対決と、私の目には映ってきました。小沢氏に顕著なのは、日本という国の危機打開のために、清濁合わせ飲んででも必要な策は講じ、阻害要因は力ずくでも排除して、政策を実行するという堅固な意志です。その拠り所は、自らの理念を反映させた民主党の衆院選マニフェストであり、そのマニフェストを支持し政権交代を実現させた有権者の存在でしょう。

イタリア史を書き続けてきた塩野七生氏は、近著「日本人へ(国家と歴史篇)」(文春新書)の中で、マキアヴェッリの「天国に行くのに最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである」を引用し、『(政治リーダーは)、たとえ自分は地獄に落ちようと国民は天国に行かせる、と考えるような人でなくてはならない。その覚悟がない指導者は、リーダーの名に値しない』と書いていますが、そのリーダー像はどこか小沢一郎氏を彷彿とさせます。

一方の菅直人氏は、「市民活動家」として清新なイメージと共に総理の座につきましたが、総理就任直後から、マスメディアの作り上げた世論を拠り所とし、アメリカや官僚などの「外圧」と容易に手を組み、「改めて法律を調べてみたら『総理大臣は、自衛隊の最高の指揮監督権を有する』と規定されており・・」発言など、いくつかのアッと驚く素人振りを発揮して、私たちを失望させてきました。

塩野氏は「日本人へ(リーダー篇)」ではこんなことも言っています。『プロとアマを分ける条件の一つである「絶対感覚」とは、それを磨くことと反省を怠らないことの二つを常に行ってないかぎり、習得も維持もできないもの』。参院選前に唐突に消費税アップを言い出し、参院選敗北後も責任を取ろうとしなかった菅氏は、「絶対感覚」も「反省」も欠如しているように見えます。

なにはともあれ、こんな両者の間で闘われた民主党代表選も明日にはその結果がでます。これまで各候補を応援してきた議員達も、最近は代表選後を見据えて「挙党体制」を言い始めています。

私たちは、民主党政権になってからも数々の失望を味わってきましたが、従来の官僚依存でアメリカべったりの自民党型政治との決別を望む立場としては、両者の長所を生かし、両者の欠点を補い合って、民主党がプロの政権政党として成長し、強靭で成熟した政治を目指すことを、願うばかりです。

再度塩野七生氏の言を借りれば、氏は著書の中で、『アマチュアがその道のプロさえも越えるのは、プロならば考えもしなかったことをやるときなのだ。それには、徹底した現情直視と、それまでの方式、つまり常識、にとらわれない自由な発想しかないのである』とも言っています。

私たち自身は、溢れる情報に右往左往し、エセ評論家として振舞うのではなく、政治の現実を直視し、その一方でじっくりと歴史を学び、社会を学び、時として「理想」に思いを馳せながら、「真のアマチュア」の立場に立って、この政権の行方をこれからも見守って行きたいと思います。