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0324 権力闘争 流水 2010/08/12-15:28:16
権力闘争は、常に面白い。誰が誰と組んで多数派を形成し、相手を打倒する。打倒された人間は、無念の思いを抱いて退場する。裏切り、買収、猟官、虚言、騙し、何でもあり。文字通り勝てば官軍。負ければ賊軍。ありとあらゆる手練手管を弄して相手を打倒する。「政治とは権力闘争である」という言葉が実感できる。

渦中にいる人間には、文字通り「政治生命」を賭けた命懸の戦いだが、外の人間から見れば、格闘技を見るような面白さがある。お祭り好きのメデイアにとってこれほど面白い題材はない。「小沢が消えた」「海江田が講演会を開いた」「小沢陣営が勉強会を立ち上げた」「山岡たちが会合を開いた」「前原が菅支持を打ち出した」「野田が菅支持を打ち出した」「仙石が菅を裏切るかもしれない」・・こういう記事を毎日見ていれば、胸がわくわくするのを抑えきれない。番記者どもが舌舐めずりをして、政治家の動向を追いかけている気持ちが伝わってくる。

しかし、もう少し俯瞰的に今度の民主党内権力闘争を見ていると、戦後政治史の中で最も重大な権力闘争が展開されていることに気付く。戦後政治のターニングポイントになる可能性がある。

先日、足立区の111歳都内最高齢男性が30年以上前にすでに死亡発覚。杉並区が113歳都内最高齢女性を調査したらあっさりと非実在が露見。これに端を発し全国で所在確認したら、100歳以上の高齢者の居住確認ができない人が50人以上という恐るべき実態が明らかになった。様々な要因が指摘されているが、日本社会の基底部分(家族制度)が崩壊しつつあることは確実であろう。

翻って、本来、このような社会崩壊の危機に最も敏感であるべき政治の現状はどうであろうか。

菅直人首相は、社民連から上り詰め首相にまでなった。いわゆる市民運動出身者。しかし、彼の政治センスのお粗末さには、言葉がない。わたしには、菅直人が首相になって一体何をやりたいのか全く理解できない。消費税増税論議、衆院選マニフェストの改編、国家戦略局の権限縮小。それが民主党内で厳しい批判を浴びると見るや、消費税増税封印、【国民生活第一】のスローガン復活、マニフェスト実現を目指す、国家戦略局法制化に前向きと来た。彼がやっているのは、芸能政治まがいのポピュリズム以外の何物でもない。一体全体、菅直人の思想・理念は奈辺にあるのか全く理解できない。

透けて見えてくるのは、国際金融資本の対日施策要請のシナリオ通りのものでしかない。それを自公政権的にやるのか民主党政権的にやるのかの手法の違いでしかなく、やろうとしているのは同じことのように思える。それは滅びの道である。おそらく取り返しのつかない結果をもたらすに違いない。

実は、現在繰り広げられている民主党内の権力闘争は、このような菅政権とその背後の既得権益層の立ち位置・理念・政策と自立派との最終決戦になる可能性が高い。メデイアは、小沢一郎=金権政治家というレッテルでしか報じないが、小沢一郎と言う男の政治理念は、他の凡百の政治家どもは足元にも及ばない。何度も書くが、彼は戦後政治家の中でも突出して革命的である。だからこそ、メデイアは彼の政治理念には触れず、ひたすら「政治とカネ」批判に終始している。しかし、日本社会が抱え込んだ危機はそのようなメデイアの思惑をはるかに超えて、もはや日本崩壊の一歩手前である。この危機を深刻に受け止めている人々にとって、小沢一郎と言う政治家は、ほとんど唯一の希望と言ってよい。

では小沢一郎の理念・政策とはいかなるものか。以下に彼が2008年9月に民主党代表選挙に向けて打ち出した「基本政策案」を紹介しておく。この基本政策案が2009年夏の衆院選の民主党マニュフェストの根幹になったものである。

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■ 新しい政権の基本政策案― 新しい国民生活をつくる― 衆議院議員小沢一郎

 平成20 年9 月8 日

民主党は、衆議院総選挙に勝利して、国民生活を顧みない自公政権を倒し、日本を再生させる新しい政権をつくる。

新政権は、「国民の生活が第一」の大原則に基づいて、政治・行政の仕組みそのものをつくり替え、「格差がなく公正で、ともに生きていける社会」を築く。

その主な柱は、以下の9本である。

1、全ての国民が安定した生活を送れる仕組み

(1)確実・公正な「信じられる年金」の確立

1.「消えた年金記録」は国が総力を挙げて正しい記録に直し、被害を救済する。
2.「年金通帳」を全加入者に交付して、記録が消えないシステムに改める。
3.全ての年金制度を一元化し、年金の基礎(最低保障)部分は全額税で賄う。

(2)誰もがいつでもサービスを受けられる医療・介護の確立

1.後期高齢者医療制度は廃止し、医療制度を一元化する。
2.「医師派遣制度」を創設して、医療現場の崩壊を防ぐ。

2、安心して子育てと教育ができる仕組み

1.子ども1人当たり月額2 万6000 円の「子ども手当」を支給する。
2.公立高校の授業料を無料化し、大学などの奨学金制度を拡充する。

3、まじめに働く人が報われる雇用の仕組み

1.国としてあらゆる手立てを講じて、「働く貧困層」の解消に取り組む。
2.中小企業を財政的に支援したうえ、最低賃金の引き上げを進める。
3.パートや契約社員を正規社員と均等待遇にする。
4.働く意欲のある限り、生涯働ける制度を確立する。

4、地域社会を守り再生させる仕組み

(1)農林漁業の再生

1.農業者への「戸別所得補償制度」を創設して、農業経営を安定させる。
2.漁業についても、同様の所得補償制度の創設を検討する。
3.安全な食料を国内で安定供給し、食料自給率を高める。
4.森林・林業への自立支援を進め、100 万人を目標に雇用を拡大する。

(2)中小企業の再生

1.「中小企業憲章」を定め、国がタテ割り行政を越えて総合的に支援する。
2.地場の中小企業に対し、税制面で研究開発や地域資源の活用を支援する。

5、国民の生活コストを安くする仕組み

1.全国の高速道路を無料化し、物流コストを引き下げる。
2.ガソリン、軽油の暫定税率を廃止し、増税分を国民に還元する。
3.国のプロジェクトとして石油・ガス、原材料などの確保に取り組む。

6、税金を役人から国民の手に取り戻す仕組み

1.特殊法人、独立行政法人、特別会計は原則として廃止する。
2.役人の天下りを全面的に禁止し、税金のムダづかいを根絶する。

7、地域のことは地域で決める仕組み

1.国の行政は、国家の根幹に関わる分野に限定する。
2.地域の行政は全て地方に任せ、本当の地方分権を実現する。
3.国の補助金は全て廃止し、地方に自主財源として一括交付する。

8、国民自身が政治を行う仕組み

1.国会審議は、国民の代表である国会議員だけで行う。
2.与党議員を100 人以上、副大臣、政務官などとして政府の中に入れる。
3.政府を担う議員が政策・法案の立案、作成、決定を主導する。

9、日本が地球のために頑張る仕組み

(1)地球環境の保全

1.温室効果ガス排出量の半減に向け、省エネルギーなどを徹底する。
2.太陽光、風力など、再生可能エネルギーの利用を推進する。

(2)主体的な外交

1.強固で対等な日米関係を築くとともに、アジア諸国と信頼関係を構築する。
2.国連の平和活動に積極的に参加すると同時に、国連改革を推進する。

以上の9本柱をつくることではじめて、新しい国民生活、新しい日本を実現することができる。

私は、「日本再生」の大事業の先頭に立つことを誓う。

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この政策が如何に革命的であるか、多少戦後日本の政治をかじった人間には一目瞭然であろう。小沢一郎は、本気でこの改革を行おうとしている。だからこそ、既得権益層である@自公の特権政治家、A特権官僚、B大資本企業、Cマスコミ、D米国支配権力は、「民主党による政権交代」絶対阻止で一致し、東京地検特捜部を使って「国策捜査」を仕掛け「小沢潰し」「民主党潰し」の弾圧を強行した。この反革命策動は、民主党政権成立以降も継続し、ついに鳩山政権崩壊、小沢幹事長辞任、菅政権樹立という形で結実した。

しかし、菅政権の「反革命的性格」が明らかになるにつれ、国民は民主党に参議院選挙大惨敗というきついお灸を据えた。だが、「菅政権」は、既得権益層の支持という錦の御旗を立て、「政権」にしがみついている。これを完全に放逐する戦いが、九月の民主党代表選である。マスコミ流政局的視点ではなく、この九月の民主党代表選は、21世紀日本の運命を決める最終決戦だという認識が必要である。