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0309 憲法の理念も現実も米海兵隊の国外撤退を指し示している 笹井明子 2010/05/03-05:24:09
普天間基地移設問題で政治が足踏み状態となっているかに見える今年の憲法記念日は、今までの、ある意味机上の「護憲・改憲」論議とは異なった、喫緊の現実的課題として、「憲法」の指し示す意味を具体的に考える日となりました。

現在、普天間基地の移設先をどうするかという議論は、米軍の駐留は日本の平和と安全のために必要、という前提に立っています。しかし、普天間基地に纏わる事実を検証すれば、アメリカ海兵隊を沖縄に残さなければならない防衛上の理由は、日本側にとっても、アメリカ側にとっても、もはやほとんど無いことが分かります。

周知の通り、現在日米政府は、中国脅威論に基づいて、「南西諸島が海上交通路の要衝(シーレーン)」とする中国封じ込め作戦を採っていますが、米国防総省は、中国が現在の「第1列島線の防衛(沿岸防衛作戦)」から、近い将来、「第2列島作戦の防衛(海洋防衛作戦)」に乗り出してくるとの判断に基づき、第2列島線防衛のために、沖縄の米軍をグアムに移転しようとしています。

2006年5月1日に合意された「再編実施のためのロードマップ」は、「約8千名の第3海兵機動展開部隊の要員と、その家族約9千名は、2014年までに沖縄からグアムに移転する」とし、2008年9月末の在沖海兵隊の兵員数からすると、2014年には単純計算で4400名、さらに詳しく分析すると実際には2千名ほど、それも常駐ではなく6〜7ヶ月毎の交代要員が残るだけになります。そして、この数の少なさは、海兵隊の沖縄駐留がもはや“象徴的駐留”に過ぎないことを表しています。(*小西氏)

それでもなお沖縄に海兵隊を残そうというのは、「思いやり予算」などの確保のために形式的存在が必要だということと、イラク戦争・アフガン戦争などの地域紛争に、他の陸軍部隊などと併用される海兵隊は、アメリカ本土に置くより、沖縄に置くほうが安上がりだという、もっぱらアメリカの財政上の理由からで、日本の平和と安全の観点からすれば必然性のない駐留なのです。

しかも、日本の安全に拘るとされている中国脅威論による中国封じ込め作戦は、米軍の駐留に止まらず、中国軍による南西諸島の一部占領を想定し、南西諸島への「着上陸戦闘」の共同訓練・演習という形で、日米が一体化して軍事力を拡大し、自衛隊の海外展開能力(=海外派兵能力)を形成するものであり、結果として、東アジア地域に却って不安定要素を生み出す要因となっています。

『「貿易立国」である日本はもとより、世界中の「先進国」のすべては、世界の海洋環境が平和でない限り存在しきれない、本来「世界平和」なしに世界経済は成立しない事実を認識すべきだ』と小西氏(*)は指摘します。

2011年度のアメリカの国防予算は7080億ドルで、オバマ政権になっても依然としてアメリカは世界の軍事費(1兆4千億ドル)の約半分を消費する戦争国家であり続けています。

「核兵器廃絶」の理想を言うのであれば、併せて「戦争のない世界」への取組みも開始して欲しい。その第一歩としてアジア太平洋地域の平和の障害物となっている軍事基地を今すぐ日本から撤退させて欲しい。沖縄に、日本に、アメリカ海兵隊はいらない。

これは「日本国憲法」の理念であると同時に、現実的・具体的な世界の、そして今という時代の要請です。いま私たちは、日本のマスメディアには載らない私たちの真剣な思いを、あらゆる機会を捉えて、日米双方のリーダーに強く訴えることが必要ではないでしょうか。

*参照資料:「日米安保 再編と沖縄」(小西誠著・社会批評社)