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0269 映画「ホテルルワンダ」を観て 名無しの探偵 2009/09/21-21:08:56
1、多分、この映画は誰かがすでに紹介していると思います。

この映画の公開は2004年でした。日本では映画の配信元が難色を示したため公開が遅れたという事情があります。その原因は映画は娯楽作品だからという思考が働いたと思います。
しかし、20年前に観た南アのアパルトヘイトを扱った作品「遠い夜明け」を観たときはそうではありませんでした。
この20年の間に映画は多くの観客動員が見込まれるものに限るという考えに馴らされてきている、ということではないでしょうか。

映画は3カ国の合作ですが、主なる俳優はアメリカ人でした。主役のポール、国連軍の大佐などです。ところが、この二人の俳優は名演技だったと思います。

前置きが長くなりましたが、「ホテルルワンダ」の粗筋は
ルワンダ内戦の結果として支配者側のツチ族が被支配者側のフツ族(人口多数)によって大量虐殺が進行している時にホテルに避難した穏健派のフツ族の人とツチ族約1200人を支配人のポール・ルセサバギナが匿い最後まで守り通したというものです。

この映画では最初主役の支配人ポール(アフリカ系アメリカ人俳優が熱演している)は虐殺が始まっていることをまだ知りません。
奥さん(ツチ族)が隣人が殺害されるのを恐怖をもって目撃したことから(ポールはぴんとこない)徐々に虐殺がほんとらしいと分かってきます。
虐殺はたった100日で100万人(総人口の10パーセント)が虐殺されたという説もあり、映画の信憑性が出てくる。
そういうわけで支配人のポールはホテルの取引相手がツチ族虐殺の張本人の一人であることが分かってきたり、ホテルの利用者の政府軍将校がツチ族の虐殺を本気で止める気がないことも分かってきます。

ポールが匿った人々を救出するのに頼りにするのは国連軍の大佐(彼は平和維持部隊として着任している)であったりするわけです。

まだ、虐殺がホテルの周辺では明らかになっていない頃に
支配人はニュースで大統領が暗殺されその犯人がツチ族だというラジオ放送(フツ側)を聞き、またその放送では「
ツチはゴキブリであり殺せ」」という扇情的な内容であったため徐々に虐殺からホテルへ逃げてきた人々を救おうという気持ちを固めます。

支配人の気持ちを決定した要因にはツチ族の妻と子供たちを救うことが大きな動機になっていますが、1200人も
最終的に救出した結果を考えれば家族の救出だけが動機ではないと思います。

支配人のポールが避難民1200人を救う手立て:武器は
この三ツ星ホテルの資産である暖簾であり、酒類のビールなどであり、お金です。政府軍の将校はもっと酒を飲ませろというわけです。

2、ところで、虐殺から当初逃れてきたのは欧米人だったり、ツチの人だったりしてそこへ「国連軍の救出」としての介入があり、ポールや避難民の人々もこれで助かると思い安堵の気持ちになりますが、例の大佐の行動を見てなんとなくルワンダの人々は国連の救出対象になっていないのではないかという不安が出てきます。
その大佐はバーで強い酒を飲みながらこういいます、「君たちはアフリカ人であり、先進国のニグロでもない、それ以下なんだよ。」「国連のやつらは君らを助ける気がないのだ。」
案の定、国連軍の「平和維持部隊」は欧米人だけ救出して
ルワンダの人々を残してさっさと引き上げます。

このシーンを見ると国連という存在が欧米人の「権利」
と利益を守るだけのエゴの国際機関である、という真実に
いやおうもなく直面させられます。フランスの記者(フェニックスというアメリカ人俳優が好演)は自分の不甲斐無さに打ちのめされていた。

こうして「国連」(この30年くらい存在理由が証明できていないだろう)が去った後にポール一人が知恵を絞り武器としてのホテルの資産を使用して1200人のルワンダ人の避難民を救出せざるを得ないという状況になってくるわけです。
あの大佐がまた救出に来るという2日(?)後まで虐殺者から(フツ族の一般の人が多い、ラジオで扇動されたので)守るという難事業が支配人の前に立ちはだかるのだった。

こうした筋立ての映画であり、支配人ポールは結局1200人を最後に救出できたのであるが、国連の度重なる「限界」を見せ付けられた映画でもあった。
                    以上