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0267 大筋を見失わないように 鈴木建三 2009/09/07-11:26:03
私は先々月満八十歳になった。考えて見ると、この年齢になればいつ死んでもごく自然のことで、誰も気にならないだろう。
しかし、当人はこの年齢になっても死にたくないのである。でも人間でない何かにいつか殺される、いわゆる自然死は避けがたいだろうし、人間が死ななくなったら大変である。
しかし私はその覚悟もできていないし、特に人に殺されるのは、どんな理由でも真っ平である。国内法では、どんな殺人も禁止されているし、重大犯罪である。人殺しに正義はないのである。

ところが不思議なことに国際法では、戦争、つまり相手を殺す、人殺しを目的とすることが、ある意味で認められている。
考えて見ると、少なくも主権在民の国では、国家を支配するのは国民のはずなのに、その国が国家という変に勇ましい名を持つと、国家を守るために国民に人殺しを強制し、殺されることを強制できるというのは実に奇妙なことである。そんな権利は国家にあるはずがない。
大体、国家を守るとかいうのがそれほど大切なことなのか。日本がそんな勇ましい国家になったのはここ百数十年のことに過ぎない。それ以前は国(くに)は藩だったし、(「おくにどこですか」と聞かれて日本という人は今でもいない)人殺しの戦争をするのは、生産者から多量のオトシマエをとっていたプロの武士だけで、明治以後の言葉でいう平民は関係なかったのである。

この奇妙な悪行を禁止するため、日本で憲法九条ができたのであり、日本国民は国家のために人殺しをしたり人に殺されたりすることはこれで拒否したのである。
今被害妄想の連中がいうように、どこかが攻めてきたらさっさと降参すればいいので、その前にはじめから防衛などしませんといえばいいのである。いまの自衛隊こそ、元々この世界史的にも画期的に優れた憲法を無視してアメリカが押し付けたものである。

話を少し変える。
今度の選挙で、小泉の選挙の裏返しのように民主党が大勝してしまった。わたしもここ何十年も政権をとって腐敗し続け、公僕も腐敗させつづけた自民党政権が負けて、政権が変わるのはそのほうがいいと考える。
しかしよく考えてみると、この党のなかには改憲論者がうじゃうじゃいる。教育基本法の改定のとき、「愛国心を国民に押し付け、その教育によって国のために死ぬ人間を作れ」といった民主党議員もいるのである。

確かに国民の生活は今大変である。自民党の積悪のたたりである。しかし、その現時点の問題に気をとられるあまり、護憲+がその大筋の護憲を忘れたら大変である。戦争好きのアメリカに日本に沢山の傭兵を作ろうとするのを止めさせ、日本自身も九条を護りぬくためには、いかに先延ばしされても、来るべき国民投票でこの改定を阻止して、圧倒的多数で護憲派が勝つことであるという大筋は絶対に忘れてはならない。アメリカさんが圧力をかけられないのは国民投票なのである。民主、自民の両方の変な風潮にこの問題を風化させてはならない。