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0245 主権者の責任 笹井明子 2009/04/13-10:28:02
小沢一郎民主党代表の公設秘書の逮捕・起訴で政界に激震を走らせ、連日マスコミを賑わした西松建設の違法献金事件は、その後起きた北朝鮮の“ミサイル”発射・迎撃騒動や麻生内閣による15兆円の補正予算という大盤振る舞い発表の前で、もはや「旬」を過ぎた感がありますが、その影響は今尚じわじわと利き続け、小沢代表の進退と遠からず訪れる衆議院選挙の行方に不透明感を残しています。

小沢氏自身は現在も自分の進退について「世論の動向を見て判断する」と言っているようですが、衆議院選挙に勝って政権交代を実現することが最大の目標である民主党の代表にとって、「世論の動向」が判断基準となるのは、当然のことと言えるでしょう。

しかし、昨今の「世論調査」の動きを見ていると、「世論」の当事者である私たち国民まで、「世論の動向」を見ながら自らの判断を決めるという風潮が見え隠れし、大いなる危惧を抱かずにはいられません。そこには、マスコミを介して流される政治的プロパガンダに操作される危険が潜んでいると、感じられるからです。特に今回のように「道義的な善悪」を挟んで世論が問われる場合、「建て前」抜きに判断を示すことは難しく、大勢につく回答結果が独り歩きし始めることが懸念されます。

戦前から戦中にかけて、国家の意を受けて、若者に向けて口々に、国家のために死ぬことを「忠」と説き「人の道」と説き「名誉」と説いた宗教家たちは、戦後六十年以上経った今になって、ようやく自らの過ち・戦争責任への反省を表明し始めています。しかし、彼らの言葉に導かれるようにして国家に捧げられた、若者たちの尊い命が戻ってくることはありません。

最近では、マスコミに誘導されるように、世論が小泉流の構造改革を熱狂的に支持し、衆議院選挙で自民党を圧勝させました。「あの構造改革は、社会保障の切捨て、貧困の増大、セーフティネットの崩壊を日本社会にもたらすだけのものだった」と近頃はマスコミもこぞって指摘していますが、結果として生じた社会の傷は今もなお私たちの生活に暗い影を落とし続け、自公政権の居座りは今も続いています。

戦後延々と続いてきた自民党による実質的な一党支配の終焉が近付き、「政権交代」という大きな転換期がようやく訪れようとしている今、過去に犯した愚を再び繰り返すわけにはいきません。時流に乗るのではなく、自分自身の生活実感や何が大事かという内なる価値基準を静かに見つめ、それを拠り所に現実を見据え、判断することの大事さが今、問われています。

結果としてどのような選択をするにしても、自分でしっかり考えて自律的に「世論」の一翼を担うことこそが、主権者としての私たちの責任です。真の民主主義が日本に根付くかどうかの鍵は私たちの手中にあることを、銘記したいと思います。