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0236 消費税率引き上げ論議に思う(現役引退者の呟き) 笹井明子 2009/02/03-18:35:42
最近、「今や国家は大赤字、このままでは数年後に訪れる超高齢化社会に対応できない、早期に消費増税に着手することが政治の責任」との論調が、政府のみならずマスコミでも喧伝され、麻生内閣も、すったもんだの挙句、「2011年度の消費税増税」の含みを残す税制改正関連法案を提出しています。

しかし、ちょっと待ってください。例えば、私を含むかつてのサラリーマンは、現役時代に猛然と働いて、永年に亘り決して安くない所得税や各種社会保険料を天引きの形で納め続けてきました。それに加えて、消費税もかれこれ20年間、否応も無く納め続けています。国がその時々に言ってきた「高齢化社会」あるいは「自身の老後」への備えの責務は、十分に果たしてきたはずです。

私たちがこれまで納め続けた税金や保険料は、来るべき高齢化社会に向けた、長期展望に基づいて徴収されていたのではなかったのでしょうか。各省庁が、その場その場で使いたい放題で食いつぶすためのものだったのでしょうか。消費税率引き上げを言う前に、これまでの税制や社会保険制度のどこに欠陥があって、あるいは誰の責任によって、永年納め続けた人たちの老後すら保障できないのか、はっきりさせてもらいたいものです。

年金未払い問題も、金融危機の嵐に紛れてうやむやのままです。そして今も高齢者の間から聞こえてくる「未払い分を払ってもらうまで生きていられるだろうか」という嘆きは、掻き消されようとしています。身内を庇う体質からか、過ぎたことは忘れるという日本人特有の“美徳”のせいか、これまでの問題点はうやむやのまま、誰も責任を取ることもない現状で、「消費税の更なる増税を」といわれても、それが私たち自身の今と若者の未来の保障に繋がるとは、とても信じられません。

生産調整という名の下にいとも容易く放り出される労働者、数が増えすぎて困るとお荷物扱いされる高齢者、景気回復のためにどんどん消費するようにとはっぱをかけられる消費者。与党も野党もそれぞれに「国民の暮らし第一」と言ってはいますが、国会やテレビ討論の場における政治の言葉は、今日本で暮らす私たちの存在を、『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を保障された個々の人間としてではなく、数として、あるいはやっかいな社会問題としてしか捉えていない、と感じさせます。これでどうして政治に信頼を寄せることができるでしょうか。

金融危機の煽りを受けて、今や企業年金にも暗雲が漂っていると囁かれ始めています。老いも若きも不安がいっぱいで、とても景気回復ための消費どころではありません。政府家・官僚の皆さん、これ以上、あなた方が好き勝手に使うお金を差し出すのはごめんです。