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0231 緩やかな連帯 宮天狗 2008/12/29-10:50:25
 
 アメリカの金融危機に端を発した市場の混乱は全世界を席巻し、新自由主義の破綻もささやかれる中、今年も残すところあと2日となって巷には職を失い宿舎を追われる人々があふれています。厚生労働省では来年3月までに8万5年人の非正規労働者が職を失うと予測していますが、その先鞭を切ったのが日本最大の企業トヨタ自動車の派遣切りなのだから皮肉なものです。
 
 当事者の一人フリーターの赤木智弘氏は、『論座』07年1月号に”丸山真男をひっぱたきたい 希望は、戦争”と寄稿してリベラルを挑発しました。冷静な計算の元に書かれたことは、そのブログに各種資料が丹念に集められているのを見ても明らかで、応答したのは佐高信、奥原紀晴、若松孝二、福島瑞穂、森達也、鎌田慧、斎藤貴男、そして鶴見俊輔、吉本隆明各氏というそうそうたるメンバーでした。

 これを敷衍する形で彼は『若者を見殺しにする国』を発刊、「私があれを寄稿した時に期待したのは、物書きとして仕事が来ること、それはこうして自分の書いたものが本になったり、雑誌や新聞に書かせてもらったり、対談などをしていることで、ある程度実現しています」。
 しかしだれも就職の世話も融資の斡旋もしてくれなかったとして「経済界がフリーターや派遣労働者の雇用に対して、自己責任とか努力しろと弱者に責任を押し付け、結局は正社員として雇わないように、左派だって企業や国の責任は口にするけれども、じゃあ現実に雇用を確保してくれるのかといえば、そんなことはしない」と決めつけました。

 いささか八つ当たり気味とはいえ、年金ぐらしの身にとって痛い指摘ではあります。
「自民党をぶっ壊す」「聖域なき構造改革」という威勢の良いスローガンを信じて84%もの人が支持した小泉内閣の進めたのは、労働者派遣法の、福祉の、教育の、医療の「改革」であり、貧富の差は大幅に拡大し、古来からの「乏しきを憂えず 等しからざるを憂う」心は遠ざかるばかり。だからといってあせるのは禁物、第一次世界大戦後のドイツや、1929年の大恐慌のあとの日本のように、ファシズムの到来を招く恐れがあります。弱者が緩やかに連帯して事態の改善を目指すしかないのではないでしょうか。