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0226 若者発信「反貧困」プロジェクトを受けて 笹井明子 2008/11/26-11:39:41
アメリカ発の金融危機の煽りを受けて、日本でも自動車産業を始めとする企業が生き残りを掛けて、年内にも非正規雇用の大幅な削減に手を付ける、と報じられたばかりの11月24日に、『ロスジェネ世代からの「反貧困」のプロジェクト』というシンポジウムが開催されました。

シンポジウムの中でも、首都圏青年ユニオンの河添誠さんから、「僅かな貯蓄しかない中、10月末に解雇通知、11月20日をもって寮を出て行くよう通告され、困窮している若者」の例が報告されましたが、こうしてここ数週間のうちにも、住む場所や日々を暮らす糧を失う人たちが、何千、何万という規模で生まれようとしています。

河添さんは、働く場所をいとも無造作に奪われる若者は、秋葉原の殺傷事件の例を待つまでも無く、自分自身の尊厳を感じられなくなる、と指摘。併せて、「労働者派遣法の改正に呼応して、非正規雇用化という流れが作られ、拡がり続けている」と言い、雇用や貧困の問題はロスジェネとか就職氷河期世代という特定世代の問題ではなく、日本社会の根幹に拘る制度的な問題であることも指摘していました。

一方、そんな現状をよそに、国会では相変わらず「政局か、政策か」という愚かで悠長な論争が繰り広げられています。日本のあちこちで、様々な職種、様々な境遇の人たちから湧き起こる苦境の訴えも、「票に繋がるかどうか」という一点でしか、ここでは受け止められていないように見えます。国民が直面する現実に対して、日本の政治家のこの感度の低さは、一体何なのでしょうか。

シンポジウムでは、貧困問題と政治のかかわり方の質問を受けて、パネラーが、「“もやい”に来る人たちは、日々生きていくのに精いっぱいで、(政治という)抽象論を考えるゆとりはない」(「もやい」・冨樫匡孝さん)、「政党を超えて、政治家一人ひとりに働きかけていくことが大事」(「フリーターズフリー」・杉田俊介さん)、「特定政党に過度に期待するのではなく、政治にコミットし続けることが必要」(「ロスジェネ」・大澤信亮さん)と語っていました。

憲法27条には「勤労の権利」が保障されています。非正規雇用とそれを利用した首切りの蔓延は違憲状態と言うべきで、政治に大きな責任があります。いま困難な状況にある人達も、自分一人の問題として抱え込むのではなく、政治や社会の仕組みに目を向けるゆとりを持てれば、問題を内側から反転させることも、可能なはずなのです。しかしそのためには、今困窮している人達を喫緊に具体的に支える、その上で支援の輪を社会に広げる、更に政治にコミットしていく、こうした循環が必要だということでしょう。

確かな現状認識や具体的な対応策を、柔らかな表情で口々に語り、日々誠実に実践し続けている若いパネラーたちの姿を眩しく眺めながら、私たちも世代の垣根を超えて、彼らの頑張りを応援し続け、支援の輪の中に居続けたい、そして、私たちの視点で政治を監視・関与し続けたいと、気持ちを新たにした24日のシンポジウムでした。