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0193 名古屋高裁違憲判決の歴史的意義 名無しの探偵 2008/04/22-20:32:22
自衛隊のイラク派遣の違憲性について名古屋高裁において「画期的な判決」が出た。
判決要旨を読む限りでは「現在の自衛隊のイラク派兵」が憲法9条一項(「武力の行使は国際紛争を解決する手段として永久にこれを放棄する」の部分であろう。)に違反するというものである。

その理由として、判決はアメリカ軍を中心とする多国籍軍
によるイラク武装勢力との抗争は泥沼の戦争の状態となっており、「国際的な戦闘」であるとし、この戦闘行為に後方支援という形で武装した多国籍軍の兵員を輸送している
航空自衛隊の行為は「イラク特措法上の安全確保支援活動
の名目で行われ」たとしても「現代戦においては輸送等の
補給活動もまた戦闘行為の重要な要素である」ことを考慮すれば、多国籍軍の戦闘行為にとって軍事上の後方支援を
行っている」といえる。したがって、こうした空輸は「他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力行使を行ったとの評価を受けざるをえない」という。

次に、同判決は平和的生存権の基本的な人権としての意義に触れて、憲法の保障する基本的人権が平和の基盤なしには存立しえないことからしてそれは「すべての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的な権利」
であるとして、平和的生存権の法規範性を認め「憲法上の
法的な権利である」ことを確認する。

そこから平和的生存権に「具体的権利性」を導いている。
すなわち、「憲法9条に違反する国の行為、・・・によって個人の生命、自由が侵害され又は侵害の危機にさらされるような場合、また、憲法9条に違反する戦争の遂行等への加担・協力を強制されるような場合には」「裁判所に対し当該違憲行為の差止め請求や損害賠償請求等の方法により救済を求めることができる場合があると解する」と判決した。

では当該事件で控訴人らの請求が上記の違憲行為による平和的生存権の法的な利益を侵害されたといえるのか、という判断においては控訴人らの主張を斥けている。

大体このような判決であったと解される。
もしこの判決が国の上訴が断念され(その可能性もある、
判決は控訴人の請求を棄却しているからである)確定した
場合には既判力を持ち以後の裁判にも影響を与えることになる。
なを、この判決の重要なポイントとして判決が「これまでの政府解釈によってもイラク特措法に従っても現在の自衛隊の派遣による航空自衛隊の活動は違憲であり特措法にも
違反する」とした点である。

この二つのポイントつまり控訴人の請求は認められないという点と政府解釈によっても特措法によっても違憲であり
違法であるという「控えめな」違憲判決と評価されるにしても前段の総論部分でイラクでの自衛隊の行動を憲法に違反する「戦闘」行動の一環であると判断した点が極めて重要であろう。
また、憲法の解釈で見解が対立していた「平和的生存権」
の具体的権利性を肯定した点はまた非常に重要な点であると評価できる。

いずれにせよ、この高裁判決以後は国の憲法違反の活動や
法律に対して市民がどんどん違憲訴訟を提起する意義が高まったことは重要なことであると解される。

                      以上