| 堤未果さんの「ルポ貧困大国アメリカ」を読んで多数の日本人の認識の甘さが浮き彫りになってきたと思う。 わが政府を中心にしてアメリカに付いていけば何とかなるという漠然とした思い入れが根底にあり、アメリカの「単独行動主義」にも多数のヨーロッパ諸国とは異なり付き従った。 政府の基本的な政策までもがアメリカの模倣になっていて 生活保護などの福祉を切り捨てアメリカの戦争に加担する 戦費を捻出しているのである。
では上記の堤さんのルポではアメリカは一体どうなっているのだろうか。 要約すると、共和党などに政治献金を支払っている一部( 年々極めて少数になっている)の富める者;個人と集団の 場合がある、はますます金持ちになり、貧しいものはますます貧しくなっている。 そればかりか、堤レポートによればここ10年位でアメリカの民主主義を支えてきた「中間階層」の没落が進み下層化が目立ってきたという。 しかも下層の人々から生活基盤である住居さへも奪うハイエナのようなローン会社が暗躍していて堤さんの著書の 冒頭はこのエピソードから始まっているのである。 そして、こうした超格差社会の出現によって国民の12パーセント以上に膨張したワーキングプアー:最下層の人々は 食うものにも事欠きフードチッケットという配給に依存しているため肥満が社会問題になっているというのだ。 ことにこれらの下層の人々の子供たち(同世代の国民の16パーセントも)をそれ以上の肥満が襲っている。肥満はやがて深刻な病気の原因になるわけだから。
このように多数の貧困階層:(実際のところ)飢餓人口は お金を求めてどういうライフスタイルになっていくのか。 それが次のショッキングな報告のプレリュードだったのである。 こうした下層の人々はエンゲル係数でいう「食べ物だけの日常」以下の所得なのでこうした状況から脱出したいと誰もが望んでいるという。 そこにつけこんでいつの日にかある仕事への誘いが舞い込んで来る、「高収入の働き口があるので来ませんか」というので応募してみるとイラクでの仕事であり傭兵に近い底辺の仕事をあてがわれるという。 確かにアメリカ国籍ならば高収入であるが、イラクの戦場なので放射能で汚染された飲料水などで病気になった人が 多いという。 しかもこうした貧困の人々はアメリカ国内だけではなく全世界からかき集められている。 アメリカなどの先進国、具体的には多国籍企業によるグローバリズムという経済の流れにより食べるものも満足にない人々の働き口がイラクなどの戦場であるというレポートはアメリカ社会が国内ばかりか全世界に波及させた貧困の 輸出と戦争ビジネスへの駆り立てだったのである。 そして、最終章は「民営化された戦争」(戦争ビジネス) の実態報告である。 傭兵の企業化を果たして大企業化するアメリカの傭兵企業の実態に触れ彼らがアメリカの国軍よりも割安で傭兵として戦場で仕事をして政府から歓迎されている近年の歴史に 触れている。 影の軍団であり、法律による制約もこの隠れた軍隊には適用されないのである。 ブッシュ政権が一体どういう政権なのかじわじわと明白になってきて私たちの未来を蝕む悪魔的な様相が垣間見られ 暗澹たる思いが残る。 (憲法九条の問題に触れるつもりでしたが、堤さんの著書の感想になってしまいました。) 以上
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