| 矢祭町(やまつりまち)。福島県中通りの最南端に位置する町。東白川郡に属する。人口- 6,740人(2005年) 世帯数 - 1,957世帯(2005年) 年少(15歳未満)人口率 - 13.5%(2005年) 高齢(65歳以上)人口率 - 30.7%(2005年)・・・(ウィキペディア )
東北の小さな町が有名になったのは、平成の大合併に正面から反対。他の市町村に先駆けて合併を行わない事を宣言していた(合併しない宣言)。 その後は独自で財政の歳出削減を行っていた。この町にとっては、それこそ身をきられるような大改革だった。少し、長いがこの町が行った改革を列挙してみる。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)職員・人件費と削減 (2)新規採用停止(2003年以降)、嘱託職員削減、「収入役」廃止。 (3)議会定数削減(18人→10人、2002年9月) (4)町重要職・議員報酬削減(職員の人数は減らしたが、給与削減は行わず) (5)職員削減に伴う、職員の職務兼務・組織変更 七課体制を五課体に。 (6)庁舎の清掃も、町長・助役・教育長も行う。トイレ清掃も管理職が行っている日もある。 (7)開庁時間 役場窓口業務にフレックスタイム導入
(8)年中無休の役場 窓口平日は7時半〜18時半まで ・出張役場制度の創設 (役場職員の自宅を出張役場として利用)町民は職員自宅で各種届出・納付可能に。 (9)保育所・幼稚園の一元化 保育時間は平日7時25分から18時45分まで。土曜日は7時45分から12時45分まで (10)町税等の公共料金の支払いをスタンプ券で支払い可能に 地元商店会が発行する、スタンプ券(買い物の際に2万7000円で500円分)で、介護保険料含む各種公共料金を支払うことが可能になった。 (11)役場職員消防隊の結成 役場職員が消防員として、消火活動にあたっている。 (12)税金滞納対策 職員自ら回収にあたる。夜は超過勤務手当のかからない課長クラスが担当。 (13)住民基本台帳ネットワークシステムに非接続 2002年7月 全国で最初に離脱を宣言。個人情報保護の観点と、利用者が年10人足らずだったことから。 (14)町議会が議員報酬を月額制から日当制に変更 日当は3万円でボーナスに当たる期末手当も廃止。2008年度から導入。試算では議会の人件費が3分の1以下になる。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ この大改革を主導したのが、前町長根本良一。彼は24年の長きにわたって矢祭町町長を勤めたが、かって昭和の大合併時の大混乱とその後の亀裂、平成の大合併による山村の切捨てに反対して、自立の道を選択した。 当然、このような厳しい大改革を行うためには、町民の支持がなければならない。それだけ、行政サービスが低下するからである。
この矢祭町の大改革を象徴する政策が、2006年に提案された図書館(矢祭もったいない図書館)設立である。本を買う予算は0円。全て、全国からの寄贈で賄われた。約1年で全国から約43万5000冊の寄贈を受けた(収納容量に到達したため図書の募集は終了した)。建屋は古い武道館を改修した
この図書館の設立準備委員会、寄贈された蔵書の整理、貸し出しの受付、全て地元のボランテイアで行われた。寄贈してもらった人には、一人一人丁寧な礼状を書き、寄贈してもらった人の名前は全て図書館のガラスに刻した。 行政は武道館の改修費用だけを負担し、後は全て町民が手弁当で奉仕した。 現在、この図書館は、蔵書を寄贈した人を中心にして、全国から来館者が絶えない。全国どの地域に住んでいても、図書館の会友になれるし、全国どの地域に住んでいても本を借りることができる。 http://www.town.yamatsuri.fukushima.jp/cgi-bin/odb-get.exe?WIT_template=AC020004&WIT_oid=icityv2_004::Contents::1211 (もったいない図書館)
人口6、7000人弱の東北の片田舎の町が、自立の道をしっかりと歩みだしているのである。特に、全国に先駆けて、町議会議員の報酬を日当制に変更したのも特筆される。それも町議会議員自身の発議によってである。これで 議会の人件費が3分の1以下になる、とされている。
「個と集団】の中でも触れたが、【自治】とは本来このような住民の手によって生み出されるものである。根本前町長という優れたリーダーがいたことも忘れてはならないが、何よりまず一人一人の住民の町政参加意識とそれを支援した役場職員の意識改革がこのような行政を生み出した。
現在、矢祭町は、 削減するだけでなく、住民サービスは格段に向上している。また、大規模で破格的な条件で企業・住宅誘致を行うことで町税の増収を図っている。 介護保険料は福島県一安い。
地方自治と言葉で書くのはたやすいが、それこそ革命的な意識改革が必要なことを矢祭町の例は示している。同時に、補助金付け行政では決して得ることができない【故郷・郷土】への愛着を創り出している。
そして、現在の多くの人は忘れてしまっているが、中世末から戦国時代にかけて日本人はこのような多くの【自治的農村】【自治都市】を持っていたのである。 矢祭町の改革は、日本人のDNAに刷り込まれた【自治】の魂を呼び起こす一つのきっかけになる。同時にそれが、21世紀日本の希望になる可能性があると思う。
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