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0164 希望 宮天狗 2007/09/24-08:23:08

 元治元年(1864)生まれの祖母の口癖は「お客様がお帰りになったすぐ後に大きな声で笑ってはいけない」でした。生き馬の目を抜く江戸の暮らしで、無用な誤解を招かないための町人の知恵であるとともに、客に不快な思いをさせまいとする細やかな心配りが感じられます。

 その対極に位置したのが、バブル崩壊後の重苦しい空気を吹き飛ばすように「自民党をぶっ壊す!」と叫んで登場した小泉純一郎前首相。氏は掛け声こそ威勢がよかったものの、中国や韓国の民族感情をいたく刺激すると分かっていながら靖国神社を参拝し、大方の高齢者にとって命の綱である年金に対する課税最低額の大幅引き下げや老年控除の廃止など、他者の痛みをいささかも意に介さない行動と施策に終始しました。

 やはりというべきか、改憲をもくろむ後継者安倍晋三首相の掲げた「戦後レジームからの脱却」は、私たち戦中派の神経を逆なでするものでした。幼時から十代後半まで戦争に次ぐ戦争、そして現人神である天皇にすべてを捧げるのが臣民の務めとされて育った私たちの世代にとって、非戦の誓いと基本的人権を保障する憲法は開放宣言であり「戦後レジーム」そのものだからです。

 しかしこのような心無い自民党政権は、自然に生まれたわけではなく私たち日本人が育てたもの、代えようと思えば代えられる。参議院選挙での自民党の惨敗は人々にそれを知らせてくれました。一方民主党の得票には、自民党のあまりの醜態に愛想を尽かした人、共産党や社民党に投票したくても死に票になると諦めた人がたくさん含まれています。

 悪手を連発して自滅した安倍総裁に代えて、自民党は堅実な福田康夫氏を新総裁に選び、百戦錬磨の小沢氏がこれをどう迎え撃つか?そこにこの国の未来はかかっており「希望」がかすかに瞬いています。