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0150 安倍内閣の不信任を私たちの手で 笹井明子 2007/06/25-07:00:58
安倍晋三自民党総裁が誕生したときに、いち早く反応したのは、立花隆、保阪正康、小林節らの言論人・知識人だった。彼等は、長いこと政治について沈黙を守ってきたか、保守政治を支持してきたか、あるいは改憲の理論構築に一役買ってきた人たちだ。その彼らが安倍総理の国家主義的価値観や復古的な指向性、国民を支配・コントロールしようという思い上がりに、強い嫌悪を示した。

一方、戦後安定した生活を手に入れ、そのありがたさを身にしみて感じ、結果、与党自民党の存続を是としてきた一般庶民にとっても、年金システムの破綻は、衝撃的な現実として受け止められた。格差拡大やワーキングプア、税金や医療費の値上げなど、暮らしの安心が大きく揺らいでいる最中に、国が約束したはずの将来の保障もいい加減なものだったという事実を知った怒りは大きく、以来安倍内閣や自民党の支持率は急降下し続けている。

戦後私たちが手に入れたはずの「個の自律」や「言論の自由」、「暮らしの安心」。こうしたプラスの価値体系がいま崩壊の危機に瀕している。しかもそれは、次の参院選でお灸をすえれば改善されるといった、一過性のものではない。政府自民党が、長期政権の上に胡坐をかいて、現に起きている問題や矛盾を覆い隠し、先送りしてきた結果生じた、国や社会の歪みというべきものである。

加えて、祖父・岸信介をモデルに頂くお坊ちゃん政治家、安倍晋三という個性が事態の悪化を加速させている。彼は他者の痛みに対し鈍感力を発揮する一方、自分が批判されることに対しては異常なまでに敏感で攻撃的である。彼の言動からは、個の自主自律を尊重しようとか、国民生活の現実に目を向けようという意志が、全く感じられない。目に付くのは、「美しい国作り」という個人的な幻想の押し付け、大企業と手を組んだ見せ掛けの繁栄の取り繕い、問題に対する責任転嫁、権力を嵩にきた強引さ、そんなものばかりだ。

安倍総理のこうした資質に対し、自民党からも批判や不満の声が聞こえてきているが、このような人物を総裁に選んだのは、他ならぬ自民党議員たちである。そして、自民党を与党にし続けているのは、私たち有権者である。

「水に流す」のが得意な私たちであるが、これまでのように不具合は水に流して、難しいことは「お上」に任せておけばよい、いずれ自民党が何とかしてくれる、と暢気に構えていたら、状況は改善されるどころか、「戦後レジームの見直し」と称して後戻り不能なかたちで定着されてしまう。いま私たちは何を選択しどう行動するか。それがこれからの社会や暮らしの行方を決める上で、とても重要である。まずは次の参議院選で、いまの怒りを一票に託し、しっかりと審判を下したい。

その上で、私たち国民が主役であることのできる社会を手放さないために、参院選後も政治を監視し、口出しをし、次の衆議院選挙、さらに、いつか訪れる護憲・改憲を問う「国民投票」のその日まで、民主主義の担い手としてのエネルギーを持続させることを、心に刻みたい。

癌で闘病中の小田実さんが、闘病前の今年3月の憲法セミナーで次のように呼びかけている。「皆さん、われわれ、小さな人間がしっかりしなければ、いけないのです。ぜひ頑張りましょう。」(小冊子「九条の会」憲法セミナーAより)

この呼びかけの重さを、今こそ多くの人と共に受け止め、分かち合いたいと願っている。