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0146 戦時中の標語 宮天狗 2007/06/04-07:24:52
 戦時中私たちの身の回りには「欲しがりません 勝つまでは」「贅沢は敵だ」「撃ちてし 止まむ」など、調子が良く分かりやすい標語が満ち溢れていました。森川方達編著『帝国ニッポン標語集』は改めて当時を振り返らせてくれます。

「若さで働き 老いては年金」「花咲く老後 種蒔く年金」。与野党攻防の焦点となっている年金問題のキャッチフレーズかと思いきや、65年前の郵便年金のお勧め。曲がりなりにも国民皆年金が実現した背景にはこんな下地があったからですが、これを食い物にして好き放題の社会保険庁、形勢不利と見るやなりふりかまわず法案を強行採決して参議院選挙に備える安倍政権。5千万件にものぼる不明のケースをたった1年でどう処理するのか、ここはしばしお手並み拝見と行きましょう。

生めよ殖やせよの国策を端的に表現したのが「殖える子宝 夫婦の手柄」。とはいえひそかに囁かれていたのが「足らぬ足らぬは 工夫が足りぬ」から一字取った「足らぬ足らぬは 夫が足りぬ」。耐乏生活を強調した標語が、たちまち男ひでりの嘆き節に変わってしまったのだから驚きです。
「贅沢は敵だ」に一字加えた「贅沢は素敵だ」とともに、転んでもただは起きない庶民の知恵と反骨精神が見事。

スパイを意味する「見よ そこにいる第五列」。アメリカでは9/11以後こんな骨董品を持ち出して、戦争を疑問視する記者や評論家を「5th columnist」と叩いたとか。一方的な決め付けはいつの世どこの世界でも尽きないから不思議です。ナチス・ドイツの受け売りみたいなのが「正しき血から 強い民族」。いったい正しい血って大和民族のこと?

八紘一宇を推し進めたのが「日の丸広げて 世界を包め」「米英を 消して明るい 世界地図」。大風呂敷もここまでくるといささか滑稽ながら、ドイツ、イタリアと組んで世界制覇を夢見た人は決して少なくなかったはず。「面白く やがて悲しい本」です。