呼出完了
0129 M検 宮天狗 2007/02/12-07:14:01
人は誰でも自分にとって都合の悪いことは忘れてしまいます。「昔は良かった」は年寄りのおはこです。しかし身も心も破滅させる戦争と天皇制ファシズム=皇国主義には、空しく風化させてはならない事例が多々あります。

そのひとつが基本的人権なんて言葉はおろか、概念さえほとんど存在しなかった当時すら悪名高かったM検です。検査官が若者を丸裸にして陰部や肛門をためつすがめつ観察し、おかしいと見れば急所をぐっと握ってしこりや膿汁の有無を調べるこの方法は、すこぶる原始的ながら性病や痔疾を発見する効果抜群であると同時に、多感な青年の自尊心を粉砕し、羞恥心を麻痺させ、思考力を失わせる巧妙な手段でもありました。

中学3年のとき校内に「近いうちM検があるらしい」といううわさが流れたことがあります。大半は眉唾とはいえお手伝いさん相手の体験談?などを得々と披露していた連中の慌てふためく様は、こっけいを通り越して惨めというしかなかったものです。

M検は野間宏の「真空地帯」に描かれた陸軍内務班における陰湿な新兵いじめとあいまって、人を他者の殺害も自己の死も意に介さない殺人機械へと駆り立てる強力な麻薬の役目を果たしたと言えるでしょう。

自らの意思を持たなくとも良い全体主義国はある意味暮らしやすいかもしれない。でも考える葦である人間性の放棄にほかなりません。教育勅語の復活みたいなアナクロニズムが公然と唱えられる現在、奴隷の幸福はきっぱり拒否したいと思います。