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0126 戦争は人間性を破壊する 2007/01/24-23:21:16
毎日のように届くメルマガに、「イラク情勢ニュース」がある。また爆弾テロでアメリカ人兵士が死に、多くのイラク人が死んでいる。子供も女性も・・・このメルマガが届くたびに、イラクの地に苦しみを与え続ける国際政治に怒りを覚えるとともに、止められない無力感を味わう。

リバーベンドというペンネームの女性が書く『バグダード・バーニング』は、昨年本になったので読まれた方も多いと思うが、その後も、イラク情勢ニュースを通じて彼女の声が届く。今回は12月末に書かれたものだ。フセインの処刑は何のためか、スンニ派とシーア穏健派を刺激して、内戦をひどくしてからアメリカが去る予定ではないのか、アメリカ軍が去って内戦が収まったらかっこ悪いから・・・と書いた後、この4年間の自らの心境の変化を語っている。

「ここ2006年の終わりにきてわたしは悲しい。国の状況のためだけに悲しいのではなく、私たちのイラク人としての人間性の状態のために。わたしたちはみんな、4年前に私たちが誇りにしてきた思いやりや礼節を失ってきている」。そしてアメリカ兵の死のニュースを聞いて、胸が痛まなくなった自分を語る。「この4年近くの間に3000人のアメリカ人が死んだ?本当?それはイラク人の1ヵ月の死者数にも満たないじゃない。アメリカ人には家族がいた?それはお気の毒さま。わたしたちもおんなじよ。」と。

優れて人に共感する心情が、この『バグダード・バーニング』にはいつも綴られていて、それに惹きつけられて読んでいた。人としての苦しみを人間共通のものとして深く受け止めていたリバーが、あまりの大量の死と悲惨に麻痺しそうになる心を晒している。彼女の苦しさと悲しみを、安全な日本に住む私たちがどのように受け止められようか。

ふと、以前にドラマ化された野坂昭如の『火垂るの墓』を思い出した。親がいない14歳と4歳の甥姪の世話をいったんは引き受けた叔母が、食べ物が足りなくなり始めると、わが子を守るために幼少の兄妹の食事を減らす。本来なら親切でやさしい女性が変化していくのを見るのは怖かった。

私が戦争を否定するのは、そして平和憲法を護るべきだと思う理由のひとつに、戦争と人間性の問題がある。いま私は自覚的には他者に対して悪事を行いたくないと願っている(願っているだけでしているに違いないが・・・)。しかし苦境に陥ったら、どこまでその願いを保てるか、弱い自分を思うと自信はない。戦争の中に投げ込まれたとき、殺されそうになれば相手を殺すかもしれない。ふだんは人を傷つけることを厭い、殺人など思ってもみない当たり前の人たちが戦場では殺し合わねばならない。そして殺した人数が多い方が誉とされる。いったいこの逆転はなんなのだ。

リバーの苦しみは、戦争状況に投げ込まれた一市民の苦しみだ。戦争は人間性を破壊する。彼女の切実な訴えを、私たち日本人は受け止めているだろうか。せめて憲法九条を護りぬきたい。

バグダード・バーニング http://www.geocities.jp/riverbendblog/