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0101 Re: 護憲コラム 宮天狗 2006/07/31-06:30:29
敗戦直後

8月にしては涼しかった15日正午、玉音放送を聞いてまず心に浮かんだのは、口惜しさよりも「ついに負けてしまったか」という諦めにも似た悲しみでした。もとより「神国不滅」など信じてはいなかったものの、もしかしたら奇跡が起きるかもしれない期待がまったくなかったといえばうそになるでしょう。将来に対する言い知れない不安と同時に、空襲に逃げ惑うこともなければ兵士として戦場に赴く恐れもなくなった安堵感も大きく、17歳の私の気持ちは揺らいでいました。
真珠湾奇襲に始まってガダルカナル、アッツ、サイパン、沖縄の凄惨な死闘そして神風特攻隊・・。自らを犠牲にして省みない恐るべき日本人の本拠にはじめて乗り込むアメリカ兵は、圧倒的な武力に支えられていたとはいえかなりナーバスになっていたのは確かです。迎えるこちらにはつい先ごろまで「撃ちてし止まん」「一億玉砕」と勇ましく叫んでいた人々が、いつ暴発してもおかしくない状況でした。にもかかわらず占領軍の全国主要都市進駐が、トラブルらしいトラブルのほとんどないままに完了したのは、今もって抵抗の続くイラクの現状から見ても奇跡としか言いようがありません。長い戦いに倦み疲れ飢えにさいなまれて、みんな無気力になっていたせいでしょうか?
荒涼とした廃墟にさまよう人々の群れに、南方や中国からの復員兵や引揚者が続々と加わり住宅難と食糧難は一段と厳しく、人間の食べ物ではなかった大豆粕やふすままで配給になる有様で、ちなみに人一倍チビの私の体重は38キロ(現在48キロ)しかありませんでした。それでも窃盗かっぱらいがあちらこちらで発生し、闇屋が我が物顔に振る舞い、ストリートガールが街角にたむろする中で、再建に力強く取り組む人たちも日を追って増えてきました。平和のありがたさが次第に身にしみてきたのです。その明るい希望を象徴するメロディーが並木路子の「りんごの唄」(サトウハチロウ作詩万城目正作曲)であり、どん底に堕ちた人の報われることのない深い絶望を歌ったのが菊池章子「星の流れに」(清水みのる作詩利根一郎作曲)です。