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0090 カッサンドラの予言 流水 2006/05/15-10:57:01
小説家池澤夏樹は、どう見ても正気を失っているとしか思えない9・11以降の米国について、以下のように述べている。
「アメリカは頂点を過ぎた。テクノロジーが全てを加速する現代にあってはことの変化は速い。ローマ帝国が凋落するには数世紀を要したが、今は世紀を百年維持するのも容易ではない。最盛期は速やかに去る。そういう焦りが今のアメリカを動かすもっとも強い動機なのではないか。影響力を失い、資源を浪費する今の暮らしがこれからは維持できないのではないかと脅えるアメリカ。」
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この話、きわめて説得力がある。
どのような組織、集団にも必ずやり手と呼ばれる人間がいる。こういう人物は、大抵の場合、数々の伝説・神話につつまれている。そして、実像以上にその人の能力、人間性が高く評価されている場合が多い。
ところが、そういうやり手とされる人物が、自分の考えているような結果が出ない場合、それまで隠されていた本性が現れ、超然と構えていた姿勢が見るも無残に崩れ、焦りに焦って部下を叱咤激励し、大半の部下の反発を買うケースがある。
皮肉にいえば、【人間なんて所詮ちょぼちょぼさ】という話なのだが、今も昔もこういう話は事欠かないということは、一番変らないのが人間ということなのであろう。

この話、個人ならば、誰にも迷惑がかからない限り、【人間ちょぼちょぼ説】で何とかなるが、組織・集団ならば、多数の人間に迷惑がかかる。そういう人間は早く排除しなければならない。
ところが、池澤の話は、国家の話であり、しかも世界中から唯一の覇権国家として自他共に認める米国の話である。
迷惑のかかり方も尋常一様ではなく、それこそ世界中に迷惑がかかる話である。

池澤の話を一言で要約すると、【滅びの予感、滅びの脅え】が米国を疾走させているということになる。そういえば、ブッシュ大統領はキリスト教原理主義者であるという話が後を絶たない。彼らは、終末論である世界最終戦争(アルマゲドン)を本気で信じているという話もある。
世界最強国家の指導者が、滅びに向かって疾走しているなどという話は信じたくもないが、イランへの核攻撃も辞さずなどという話を聞くと、首を傾げざるを得ない。

日本にも彼の同調者は事欠かない。彼らも滅びに向かって疾走したいのか、と思えてしまう。
そういえば、カッサンドラもこう予言していた。「今やこの貪欲で粗野な男を親友と呼ぶのは危ない」と。

※カッサンドラ 
ギリシア神話に登場する悲劇の予言者として知られるイリオス(トロイア)の王女である。
アポロンに愛され、予言能力を授かった。しかし、アポロンの愛を拒絶したため、カッサンドラの予言は誰にも信じられないようにされてしまったという。カッサンドラは、弟パリスがヘレネをさらってきたときも、トロイの木馬をイリオス市民が市内に運び込もうとしたときも、これらが破滅につながることを予言して抗議したが、誰も信じなかった。

イリオス陥落の際、小アイアスにアテナの神殿において陵辱された。小アイアスは、これによってアテナの怒りを買い、ギリシアへの航海の途中で溺死させられた。カッサンドラはアガメムノンの戦利品となり、ミュケナイにつれてゆかれた。そして、アガメムノンと共に、アガメムノンの妻クリュタイムネストラの手にかかり、命を落とした。

転じて、イタリアでは、日常会話でカッサンドラは「不吉、破局」といった意味を持たせて使う。
・・・・・ウエブベキア・・・