| 先日本屋で「教科書でおぼえた名詩」(文藝春秋編 文春文庫+)という文庫本を見つけ買い求めました。 懐かしい詩がたくさん載っていますが、そのひとつに武者小路実篤のこんな一遍がありました。
「一個の人間」
自分は一個の人間でありたい。 誰にも利用されない 誰にも頭をさげない 一個の人間でありたい。 他人を利用したり 他人をいびつにしたりしない そのかはり自分もいびつにされない 一個の人間でありたい。
自分の最も深い泉から 最も新鮮な 生命の泉をくみとる 一個の人間でありたい。
誰もが見て これこそ人間だと思ふ 一個の人間でありたい。 一個の人間は 一個の人間でいゝのではないか 一個の人間 ○ 独立人同志が 愛しあひ、尊敬しあひ、力をあはせる。 それは実に美しいことだ。 だが他人を利用して得をしようとするものは、いかに醜いか。 その醜さを本当に知るものが一個の人間。
今の世の中に「一個の人間」は何人いることでしょう。 権力を握り、自分たちのために国の若者たちに他の国の人たちを殺し国土を破壊させる者。 権力を握り、それに与して国の若者たちを戦地に送る者。 彼らは決して自分が先頭に立って戦地に赴くことはありません。 戦争で殺すのも殺されるのも、決して彼らではありません。 さらに彼らの後ろに隠れて、彼らを動かす者もいます。 その者たちにとって、世界中の人たちは自分たちが「利用する」存在でしかありません。
私たちは決然と「一個の人間」として、彼らに別れを告げ、互いを「一個の人間」として尊敬し助け合う世の中をつくるために立ち上がらなければなりません。 私はその「一個の人間」になりたいと思います。
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