| 「・・・命がけとは自分を安売りしないこと。創造とは平和としあわせの堆肥になること。それだけのことがどうにもならない時があるのを忘れないでくれたまえ。」(谷川雁:「昭和18年秋の音楽」「原点が存在する」所収) どうやら、わたしたちは、「自分を安売りしないこと」「平和としあわせの堆肥」になることすら難しい時代のとば口に立っているようです。「自分の命」を賭ける対象を自分で選択できない、「平和と幸せ」を語ることが女々しいとされるマッチョな(幻に過ぎない。わたし流にいうと、一種のカルト)時代の到来です。 谷川は、同書の中で、こうも語っている。「進歩主義は存在したが、進歩的人間はいなかったということ、信条と生活が互いに裏切りあって同棲する余地を狭めようとしなかったことが戦後民主主義の最大の弱点」(「組織とエネルギー」、同掲書) 結局、わたしたちは、戦後民主主義をシステムの民主主義ととらえ、人間の民主主義まで深化できなかったつけを支払う時代に、今直面しているのであろう。 これが、わたしが教育にこだわる理由でもあります。
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