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0016 護憲という言葉 百山 2004/12/06-08:45:56
 盛りのままの葉色で地表を覆い、やがて黄葉と輝いた桃の葉達も、今はすっかり居場所を狭められ、時折り風と交わす声も、囁きのようだ。冬籠もりの近い果樹園脇の小道を所在もなく歩く。ふと、護憲という言葉が浮かんでくる。碑ならば、とうに苔むしている頃かと思う。
 憲政史を紐解けば、幾度か登場する言葉。護憲の声が上がるのは、政権の座にある者の憲法に対する姿勢が質されて居る時だ。今、私たちの回りにあるそれは、あの戦争の廃墟の中でした決意を、絵空事として踏みにじろうとする動きの台頭に対して以来のものだ。
 国の礎を国民に置く。よって基本的人権は不可侵のもの。人権に最大の敬意を払えば、自ずと個々人を存立の基とする民主社会へ。そしてさらに、故なく多くの命を奪い社会を破壊し尽くす最悪の愚行、戦争の否定へと理性は導く。
 だが人とは、他者の経験に学びつつ知性のテーブルに着くよりも、自らの優勝をひたすら追い求めるだけの生きもののように見えてくる。
やがて苔むして失せ、後世、ここにかつて護憲の碑ありきと記されて立つ標柱は、どのような風に吹かれているのだろう。