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0013 元兵士の苦しみ 宮天狗 2004/11/15-18:00:54
敗戦の混迷覚めやらぬ1947年のある日の昼休み。同僚のT君と他愛ない雑談中、突然「あんたら気楽でいいよなぁ」。振り向くとそこには復員後職場に入って間もないSさんが・・。

真面目で仕事一筋ながら孤高の雰囲気を漂わせる中国帰りの元兵士は、一語一語搾り出すように「戦地じゃいろんなことがあったさ。村中で日の丸振ってたから安心して泊まっていると、夜中に便衣隊が襲ってきて戦友がばたばたやられたこともある。オレたちは目星をつけた家に火をつけて飛び出してくるやつを片端からやっつけた。女も子供もだ。当たり前だろう。殺すか殺されるかなんだから・・。でもオレたちはいったい何のために戦ったんだ!夜になって思い出すと眠れなくなる」。

Sさんの心の底に横たわる深い闇。凄惨な記憶にいつまで苦しんだことでしょう。それでも3年前86歳の長寿を全うしたSさんの死に顔は穏やかでした。
当事者すべてを果てしない無間地獄に引きずりこむ正義の名において行われる戦争は今も止むことがありません。